サイクリストに向けた筋力トレーニングのガイド

トレーニングの中に筋力トレーニングを取り入れ、ライドに必要な筋肉を鍛えましょう。

Canyon
Canyon.com 公開:2022/08/19
サイクリストに向けた筋力トレーニングのガイド サイクリストに向けた筋力トレーニングのガイド

筋力トレーニングにはさまざまなメリットがあり、サイクリストにとっても重要です。日頃のトレーニングの中に筋力トレーニングやウェイトトレーニングを取り入れると、パフォーマンスや回復力が向上します。

細かい改善を積み重ねることの重要性が広まり、競技の厳しさも増している現在、レースを戦うサイクリストたちはトレーニングプランの一環として筋力トレーニングを日常的に行っています。バイクから離れて筋力トレーニングやコンディショニングを行ったほうがパフォーマンスが高まるという研究結果も示されています(1)。

一年中休みなくバイクに乗るには絶え間ないトレーニングが必要であり、その中にはウェイトトレーニングや筋力トレーニングも含まれます。筋力を鍛えるには時間がかかるので、結果が出るまでコツコツと続けなければなりません。筋力トレーニングについてあまり詳しくない方は、毎日ひたすら脚を鍛えるようなイメージを持っているかもしれません。スクワット、レッグカール、ランジ、デッドリフトなども良いですが、もっと大切なことが他にあります。

サイクリストが行うべき筋力トレーニングについて紹介しましょう。

サイクリストにとっての筋力トレーニングのメリットとは?

筋力トレーニングの主な目的は、ライド中にかかる大きな力にずっと耐えなければならない筋肉や骨を鍛えることです。また、怪我の予防にも役立ちます。

サイクリングでは、脚だけが強くて大きな筋力を発揮できればよいというものではありません。ハンドルを持つ手にかかる力を軽くし、ライディングポジションを改善し、必要なときに十分に息を吸えるようにするには、強い体幹が必要です。

肩、腕、首の筋力も、ロングライドや荒れた路面で疲れにくくするために不可欠です。股関節屈筋や臀部、大腿部のトレーニングは脚の力を支えるために重要で、サイクリストにとってきわめて大切な部位です。

安定したピラミッドを造る

筋力トレーニングのメリットは、自身のフィットネスをピラミッドにたとえるとよくわかります。フィル・バートとマーティン・エバンス(両名ともイギリスで有名な理学療法士で、同国の強豪サイクリストを支えることにキャリアの大半を費やしています)の著書『サイクリスト向けの筋力トレーニングとコンディショニング(Strength and Conditioning for Cyclists)』では、安定したピラミッドという概念について以下のように説明しています(2)。

「サイクリングに関するフィットネスやコンディショニング全般を1つのピラミッドとして考えることができます。残念ながらつい最近までは、一流のエリートライダーも含め大半のサイクリストがピラミッドのいちばん上の階層だけに注目し、その基礎として不可欠な階層を軽視してきました。

サイクリストに向けた筋力トレーニングのガイド The three layers of a stable pyramid

安定したピラミッドを構成する3つの階層

  • レベル1 = 最も大きな階層は、関節の可動域(ROM)や身体のコントロールを含む、体の全体的な素質に関する領域です。
  • レベル2 = サイクリングに関係するものの、必ずしもバイクで鍛える必要はない部位の身体的素質に関する領域です。
  • レベル3 = 最も小さな階層は、バイクライドで鍛える必要があるサイクリング独自のフィットネスに関する領域です。

自宅でトレーニング

この点はあまり注目されていませんが、自宅で落ち着いてできるというのは筋力トレーニングの大きなメリットの1つです。ジムに行くほうが良いという方もいますが、ハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。自宅トレーニング用のグッズも手軽に手に入るので、強い体を作り、長期的に健康を維持しましょう。

サイクリストに効果的な筋力トレーニングは?

サイクリストに効果的な筋力トレーニングには、プランク、レッグリフト、バーピー、ウェイトトレーニング、スクワットなど、関節の可動域や身体のコントロールに関するものも含まれます。このようなエクササイズをトレーニングに取り入れ、自分に合った方法で強くて頑丈な身体を作りましょう。

関節の可動域に関するトレーニング

関節の可動域を広げて改善するトレーニングは、怪我の予防だけでなくライディングポジションの改善にも重要です。

関節の可動域に関する問題を解決するには2つの方法があります。

  • フォームローラー、トリガーポイントボール、ピーナッツなどを利用する。ハムストリングや大腿四頭筋にフォームローラーを当てたり、ボールを使って臀部のマッサージを行います。
  • ストレッチ

日常的に継続してストレッチを行うと、硬くなった筋肉がほぐれ、関節の可動域が広がります。これは怪我の予防につながります。

関節の可動域が広がると、エアロポジションをより深くすることができます。関節の可動域が広く筋肉が柔軟でないと、アグレッシブなタイムトライアルポジションをとるのは簡単ではありません。このポジションで本来のパフォーマンスを発揮し良い結果を得るには、上記のようなエクササイズに十分な時間をかける必要があります。

身体のコントロールに関するエクササイズ

関節の可動域を広げるエクササイズは重要ですが、その可動域の中で身体をコントロールすることも大事です。この動きをうまくコントロールできないと、腰痛の原因になったり、長期的な怪我につながる可能性もあります。

サイクリストに効果的なエクササイズ5選

1. プランク

プランクは自分の体重だけで手軽にできるので、筋力トレーニングを始める際のこのエクササイズとしてうってつけです。腰痛の予防に大きな効果があるだけでなく、体幹や肩の筋肉にもかなり効きます。

バリエーションをつけると負荷を上げることができます。片足を上げたり、片腕を前に伸ばしたりしてみましょう。

まずはプランクの姿勢を30~60秒保つところから始め、オフシーズンの間にこれを90秒まで延ばすことを目指します。

2. レッグリフト

サイクリストの股関節屈筋は特に障害が起こりやすい(硬くなりやすい)ので、これを解消するエクササイズを取り入れましょう。レッグリフトで臀部や体幹を鍛えると効果的です。

マットに仰向けになり、腕を体の横に置きます。脚を宙に向かって上げ、ゆっくりと床まで下ろします。余裕があるようなら、頭の上に手を上げてレッグリフトをやってみましょう。負荷を上げることができます。

これを1セット約20回、3~5セットを目指して行います。ゆっくりと動かすことが大切です。

3. バーピー

バーピーはあまり評判が良くありませんが、筋力トレーニングに効果的です。全身運動のバーピーでは腕、脚、体幹をすべて使うので、バイクライドでの出力を向上させるのに適しています。

このエクササイズでは心拍がレース並みに上がるので、すぐに水分を補給できるようにボトルを用意しておくことをおすすめします。

1セット10~20回、最大5セットを目指しましょう。

4. ウェイトトレーニング

筋力トレーニングに取り組むなら、まずは自身の体重を利用したトレーニングから始めるのが良いでしょう。しかし、これをしばらく続けていると、負荷が物足りなくなってきます。

ダンベルやケトルベルは、筋力を強化したい場合に便利です。必ず軽めのウェイトから始め、少しずつ重くしていきます。反復回数やウェイトに気を取られず、正しいフォームで行うこと(体幹に力を入れ、背筋を伸ばし、臀部の筋肉を使う)に集中しましょう。

以下のようなウェイトトレーニングを取り入れることをおすすめします。

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ケトルベルスイング

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片足デッドリフト

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ダンベルスクワット

5. ヨガやピラティス

この記事で取り上げたエクササイズの多くは、ヨガやピラティスのクラスでもよく採用されています。集中して取り組む時間を作るなら、クラスに参加するのもおすすめです。レッスンの多くは、臀部、腰、体幹など特定の部位に集中した内容となっています。最初は1対1のパーソナルレッスンを受けると良いでしょう。小さなトラブルがあれば、それが悪化する前に発見することができます。

女性向けのウェイトトレーニング:おすすめしたい理由

ウェイトトレーニングは、特に女性におすすめです。これは、30歳を過ぎると自然に筋力が落ち始めるためです。

筋力トレーニングは骨粗しょう症の防止に役立ち(3)、更年期を過ぎた女性にも有益(4)という研究結果が示されています。

筋力トレーニングの是非に関する議論では、以前は男性のテスト結果ばかりが扱われていましたが、最近では女性サイクリストが筋力トレーニングによりパフォーマンスを向上させたことを示すデータも多く示されています(5)。

とにかく、まずは始めてみましょう!

筋力トレーニングを今すぐ始めましょう

筋力トレーニングのメリットについてひととおり理解したら、次は実際に取り組んでみましょう。自分の弱点を把握し、��れを解消することを目指してこの記事でおすすめしたエクササイズを行います。フィル・バートとマーティン・エバンスの著書を参考にしながら、少しずつ筋肉を鍛えていってください。

筋力トレーニングの専門家にアドバイスを受けることをおすすめします。正しいフォームで行うことが重要で、フォームが良くないと怪我につながることがあります。

参考文献
  • Mujika, I., Rønnestad, B. and Martin, D., 2016 Effects of Increased Muscle Strength and Muscle Mass on Endurance-Cycling Performance(筋力向上と筋肉量増加が長距離サイクリングのパフォーマンスに及ぼす影響). International Journal of Sports Physiology and Performance(スポーツ生理学とパフォーマンスに関する国際ジャーナル), 11(3), pp.283-289.
  • Burt, P. and Evans, M., 2018 Strength and conditioning for cyclists(サイクリスト向けの筋力トレーニングとコンディショニング). Bloomsbury(ブルームズベリー), pp.7-14
  • Going, S. and Laudermilk, M., 2009 Osteoporosis and Strength Training(骨粗しょう症と筋力トレーニング). American Journal of Lifestyle Medicine(米国生活習慣医療ジャーナル), 3(4), pp.310-319.
  • Mosti, M., Kaehler, N., Stunes, A., Hoff, J. and Syversen, U., 2013 Maximal Strength Training in Postmenopausal Women With Osteoporosis or Osteopenia(更年期を過ぎ骨粗しょう症または骨減少症を抱えた女性に最適な筋力トレーニング). Journal of Strength and Conditioning Research(筋力とコンディショニングの研究に関するジャーナル), 27(10), pp.2879-2886.
  • Vikmoen, O. and Rønnestad, B., 2021 A Comparison of the Effect of Strength Training on Cycling Performance between Men and Women(筋力トレーニングがサイクリングのパフォーマンスに与える影響の男女比較). Journal of Functional Morphology and Kinesiology(機能的形態学および運動生理学に関するジャーナル), 6(1), p.29.
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